集中治療(ICU)
山形大学医学部附属病院の集中治療部(ICU)は1983年(昭和58年)に開設されて以降、4床という限られたベッド数でしたが集中治療を要する重症患者を収容し治療を行ってきました。2010年(平成21年)には病院改築に伴い新しいICUが完成し6床に増床されました。同時に、ハイケアユニット(HCU)14床が新たに作られ稼働を開始したことにより、術後症例、救急症例などに対する治療を重症度に応じて機能的かつ効率的に提供することができるようになりました。そのような中、2014年(平成26年)には、これらの急性期病床20床は「高度集中治療センター」という名称で統合され、現在に至っています。
当院の高度集中治療センターでは主治医制を取っていますが、麻酔科として集中治療を担当する医師3名、専属の循環器内科医1名と腎臓内科医1名が、主治医と連携することで総合的に治療にあたっています。
また、夜間休日の当直体制においては、後期研修プログラムとして集中治療の研修を受けた麻酔科所属の医師が、その業務の3分の2以上を担当しています。その中でも、集中治療担当の麻酔科医は20床すべての急性期患者の概要を常に把握し、各診療科の医師が苦手とする高度な呼吸管理や循環管理、体液管理、鎮静やせん妄治療といった中枢神経の管理、緊急対応などを行っており、Semi-closedタイプのICUとして理想的な医療環境が整っています。
山形県においては3つの基幹病院のICUが日本集中治療医学会に認定された集中治療専門医研修施設となっていますが、その中でも当院のICUは最もレベルの高い集中治療を提供する施設として、臨床はもちろんのこと、学生や研修医の教育、最先端の研究にも力を入れています。2016年度の診療報酬改定で新たに設定された「特定集中治療室管理料1」は基準をクリアするのが難しく全国的に承認施設は少ないのですが、当院では早々に取得することが出来ています。
ICUとは「内科系・外科系を問わず、呼吸・循環・代謝などの主要臓器の急性機能不全の患者を収容し、総合的・集中的に治療・看護を行うことにより、その効果を期待する部門である」と定義されています。当院のICUにおいても、新生児、小児を含め成人まですべての年齢における、意識障害、呼吸不全、循環不全、重症感染症、重篤な代謝障害、大手術後、その他にも多発外傷、熱傷、薬物中毒など、あらゆる重症患者を治療対象としています。
高度集中治療センター20床のうちのICU6床では、75%の患者が心臓や大血管疾患の術後患者であり、その他に呼吸器外科・胸部腹部外科の大手術後、重症外傷、重症呼吸不全、循環器内科における重症心不全の患者が収容されています。麻酔科では心停止蘇生後の脳蘇生を担当しており、ICUで治療的軽度低体温療法を行うために麻酔科が主治医となって治療を行っています。HCU14床では、6割が内科系救急や内科系疾患の重症患者であり、残りの4割が一般的な外科手術後の患者となっています。ICUで治療された重症患者で一般病棟で管理するには未だ不十分な全身状態であれば、HCUに移動し引き続き治療を継続できるようになっていて、ICUとHCUは適切に機能分担されています。
業務を円滑に進めるためには、高度集中治療センターに収容されたすべての患者の病状を把握し、重症度や緊急度を判断するための知識と経験を有する集中治療担当麻酔科医の役割は大きく、24時間365日に渡って急性期病床のベッドコントロールを任されています。